シンポジウム「テロと報復戦争を考える」  本シンポジウムは、日本私立大学教職員組合連合(日本私大教連)、全国大学高専教職員組合(全大教)、日本マスコミ文化情報労組会議(MIC)の主催で、2001年11月10日に東京の測量 年金会館でひらかれ、全体で52名の出席があった。  衝撃的な映像が全世界を駆けめぐった、あのアメリカテロ事件が起きてちょうど2ヶ月、アメリカがテロを「新しい戦争」と呼び、軍事報復を正当化するという流れの中で、テロ事件は根本的な解決の糸口すら見えないままの状況を迎えている。その中で、私たちはこの問題をどう考え、どのように行動しいていく必要があるのか、それを考えたくてこのシンポジウムに参加した。  シンポジウムでは、ジャーナリストからの視点から『ジャーナリストの眼から見たニューヨーク現地報告』(池田泰博氏)、憲法の視点から『「テロ対策支援法」「自衛隊法一部改正」問題と国際貢献のあり方」(隅野隆徳氏)、国際政治(国際法)の視点から『テロ犯罪への基本的対処及びその根絶に向けた解決の方向』(定形衛氏)の三者による報告があり、それに基づいて議論・交流がなされた。  ここでは各氏の報告の詳細を述べることはできないが、印象に残った内容を挙げたい。特に、池田市の報告から、テロ発生以降、異常なまでのナショナリズムの高揚の中で星条旗のバッジを胸につけ忠誠を誓わないと認められない雰囲気や興奮状態にあるニューヨークの状況は、私にとっては驚きであった。そして、何故テロが発生したのかという分析的な視点を欠いたマスメディアの報道や、「明日、○○でテロが起こるかもしれない」という根拠のない報道がメディアから流される中で、恐怖の自己増殖が起こっているというアメリカの問題状況と、同時にアメリカの放送局のコメントをそのまま流し、日本の視点や世界の視点から検証しようとしない我が国のメディアの問題は、メディアのもつ問題やジャーナリズムのあり方について私自身深く考えさせられた。そして、このテロ事件をきっかけに集団的自衛権の行使に踏み込んで憲法の第九条の改定へと進む動きの持つ問題(小泉政権の憲法に対する理解の無さや自衛隊の戦争参加へ焦点を絞りすぎているなど)を指摘した隅野氏の報告は、テロ事件を一つの手がかりにした憲法改定、そして戦争をする「普通 の国」「大国化」へと突き進もうとする我が国の問題を痛感した。また、テロは、南北問題や貧困の問題、そして多国籍企業に搾取されつくし排除されるといった絶望的な状況におかれた側の報復であったのではないか、という定形氏の報告は、普段我々が見逃しがちな国際社会の影の部分を示されたように感じた。  こうした三者の報告後の議論・交流でも様々な興味深い意見が出され、テロの問題やアメリカの武力報復やそれに対応する我が国の政治の問題、国際政治を見る視点、事実やデータを誰がどのように伝えるのかを問うことの重要性など、様々な角度からこのテロ問題を問い直すことができた。私自身、このシンポジウムに参加しながら、教育学研究者として何ができるのか、また一市民として何ができるのかを考えさせられ、これからの自分の活動を改めて見つめ直す機会となった。

(文責:高橋)